2022/10/19 17:02
手のひらにすっぽり
透明度が高く
とても小さい花器
まるで絵画のように
光を放つ金彩のデザイン
ひっそりと佇む姿に
凛とした存在感
a bottle
ひとつが放つ輝きに
魅了されてしまった
ガラス作家である
時澤真美さんの作品が
FREEPARKに届きました。
実は納品までに約5か月。
お忙しい作家さんであることと
丁寧かつ工程の多い制作のため、
待ちに待った納品でした。
丁寧にパッケージされた箱から
作品を手にした瞬間、
「なんて小さくて美しいのだろう」
そう呟いてしまったほどです。
時澤真美さんの『a bottle』を
初めて見た人はその小ささに
きっと驚くと思います。
「こんなに小さくて花瓶になるの?」
と疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
しかし、
見れば見るほど引き込まれる
その美しさは間違いありません。
ガラスの透明度にハッとし、
金で描かれた挿絵のような絵に癒され、
綺麗なものをギュッと閉じ込めたような花器を
とても愛おしく感じるのです。
特に可愛いものが好きな人の心を
ギュッと掴んでしまう作品を作るのは
ガラス作家の時澤真美さん。
どんな方が作っているのか、
どんな風に作っているのか、
もう聞きたいことが溢れてきました。
そこでお話を伺うことにしました。
どうかゆっくりとお読みくださいませ。
まずは時澤さんの経歴を紹介いたします。
経歴を見ると
ガラス作家としてなるべくしてなったような
王道を進んでいるように感じます。
実際にガラス作家として
活動を始めたのはいつ頃だったのでしょうか?
大学で始めてガラスを学び、
富山の学校でもう二年学んだ後、
その学校の助手として3年働きました。
その頃から自分の作品を展示、
販売する機会があったので
その時期あたりからガラス作家と
名乗っていたと思います。
自分で作った作品を
販売できる環境があったことは
すごくラッキーなことですよね。
今は簡単にオンラインストアを作ったり、
SNS経由で販売をすることもできますが、
当時は販売する機会を作ることが
難しい時代だったように思います。
自分のガラス作品を販売し、
ガラス作家を名乗って約13年。
現在の作家活動について伺いたいのですが、
その前にガラスが好きになったきっかけなどを
伺わせてください。
また、子どもの頃からモノづくりが
好きだったりしたのでしょうか?
子供の頃は絵というより小説などを
書いていた記憶はありますが、
ものを作るのは好きでした。
だんだんと美術の方に興味が出て、
高校は美術が出来る場所に
進めることができました。
専攻は入学時に選ばなくては
いけなかったのですが、
油絵を専攻しました。
大学もそちらに進むか迷いつつ
浪人時代は色々やりたいことを模索する中で
立体の世界にも興味があったりとかもあって
偶然か必然か、ガラスの世界を知り、
そっちの方向に進みました。
小説を書いていたとは意外です。
でも考えてみると小説の中の世界って
人ぞれぞれの想像があり、
無限のビジュアルがありますよね。
なので、美術に興味が出たときに
油絵を専攻されたことは納得します。
油絵の平面から立体に興味が移り、
実際にガラスを知ったのは大学の頃ですか?
当時、公立の大学でガラス専攻がある大学は
私の知っている限りなかったんですが、
愛知教育大学造形文化コースにはあり、
しかも外国人の先生がいること自体
珍しかった時代にピーター・アイビー先生という
アメリカ人の先生がいて、ガラスの基礎から
全て教わりました。
ガラスに興味があるタイミングに
ガラスを学ぶ環境があったことが
時澤さんのスタートなんですね。
「偶然か必然か」という言葉が
すごくしっくりきました。
大学を卒業し、富山ガラス研究所で
ガラスのスキルをアップさせた後は
どんな活動をしていたのですか?
学校の助手として3年働いた後、
隣にある富山ガラス工房で
4年スタッフとして勤務しました。
そして、独立ですね!
いつ頃だったのしょうか?
2013年です。
そのときに滋賀に戻り今に至ります。
私は吹きガラスの施設を持たないので
今も富山の方に施設をレンタルして制作しています。
そうすると、
約9年は富山にいらしたんですね。
仕事があったのもそうなんですが、
富山は市がガラス作家を応援していて、
制作がしやすかったのもあります。
今も月に1回とか2か月に1回は
車に大荷物を載せて富山に制作に行っています。
滋賀県と富山県の行ったり来たりは
なかなか大変だと思います。
滋賀県に本拠地を移した理由はあるのでしょうか?
ひとつは実家が近いことです。
あと滋賀県高島市はいろんな作家さんが
住んでいるので住み心地がいいんです。
ガラス作家で有名なサブロウさんも
近所なんです!
えー!!!
以前FREEPARKでもポップアップしていただいた
あのサブロウさんですか (^^)
そう言えばサブロウさんも滋賀県のご出身だったと。
実は私の父の実家も滋賀県なんです。
奇遇ですね~w
では、そろそろ『a bottle』について
伺わせて頂きます。
『a bottle』は「花器」としては厚みがあり、
小さいのに存在感があります。
時澤さんの個性が強く出ているように思うのですが、
『a bottle』の誕生秘話や制作方法などをお教えくださいませ。
また、制作をしていて大変だったところは
特にどんなところでしょうか?
きっかけはイラスト的な平面の花瓶の絵を見て、
これをガラスにしたらどうなるかな?
ぐらいの気持ちだったかと思います。
吹きガラスで作るのはその技法から、
どうしても回転体の形が多いので
あまり無い形で面白いかと思いました。
制作方法は吹きガラスでつぶした状態の
おおよその形を制作して、
冷ましてから全体を削りだしています。
そのあとも模様を付けてもう一回火であぶったり
金彩のため電気炉に入れたりします。
(工程が多いので理解出来ないかもしれないです、、、)
とりあえず、全部削らないといけないので、
そこがとても手間と時間がかかる大変な作業だと思います。
むむむ、、、?!
ちょっと待ってください。
イラストっぽい絵の花瓶を作ってみようという
きっかけは分かりました。
でも、その作り方が複雑です。
この写真を見てください。
始め吹きガラスで左の写真のように作ります。
そのあと削って、削って、カタチを作っていきます。
えーーー!
それは相当大変な作業じゃないです。
削ったらすりガラスみたいになると思うのですが、
最後につるつるに磨くのです?
そうです。
カタチができたらサンドブラストで模様をつけ
火であぶってから金彩を入れて焼きます。
ん???
工程がどんどん増えていきますね。
「火であぶる」のはどうしてなんですか?
サンドブラストに金彩をすると
焼いた後にマットになってしまいます。
それが嫌なので、
サンドブラスの後に火であぶり金彩をします。
そうすると艶のある金になるんです。
1:吹きガラスにて花器の空洞を作り、
おおよそのカタチを作る。
2:冷やす
3:いっぱい削る
4:磨く
5:サンドブラストで模様をつける
6:火であぶる
7:金彩をする
8:焼く
9:冷やす
10:完成
と、こんな感じでしょうか?
工程が多いのも大変そうですし、
かかる時間も多いですね!
ちなみに今回納品いただいた作品を作るのに
どれくらいかかったのでしょうか?
だいたい1か月くらいです。
よく「1個作るのにどれくらいですか?」
と聞かれるのですが、なかなか答えにくくてw
富山に行くときはまとめてたくさんの
吹きガラスを作ります。
それから成型のために削ったり、あぶったり、
模様を描いたりそういう作業を滋賀に戻って
やっているんです。
『 a bottle』が出来上がるまでに
こんなに大変な道のりがあったなんで、
ますます愛着が湧いてきます。
『 a bottle』は小さいからこそ可愛いのですが、
一般的な花器に比べるとだいぶ小さいと思います。
特別なサイズへのこだわりなどはございますか?
あんまりないかもしれないですが、
これ以上大きくしても可愛く無い気がします。
ちなみに自分の他の作品では
もっと大きいサイズの花器もあるので
『 a bottle』のシリーズはこれでいいのかな
という気持ちです。
よかったら他の花器と並べた写真を見てください。
確かに!!!
白い花器がいわゆる一般的なサイズだとすると
『 a bottle』が小さい価値がより際立ちますね。
特徴がはっきりとしている
『 a bottle』ですが、
どんな想いを込めて作り始めたのですか?
最初はしましま、みずたま、みたいな
意味の無い模様を考えていたのですが
試行錯誤の中で今に至りました。
模様もあまりあれもこれもというよりは
自分の生活の中で出会ったものや出来事や
思い出などから、抽出するようにしています。
(例えば、富山に行く途中に出会った気球や、
灯台やツバメの記憶など)
平面の世界から離れていたと思っていましたが
a bottleはそれ自体が一つ一つの小さな絵画のようで
模様をつけるとき、金彩で金色をのせる時、
絵を描いてるような気分になります。
油絵をやっていたのが、
ここでつながってくるのですね。
風景を見ているときに
イラストを思い描いたり、
スクリーンショットのように
記憶したりしてるのでしょうか?
ずっと気になっていたモノを描いてみたり、
絵日記のようなメモを取っていて
それを見返しながら描いたりします。
でも、いつも上手く描ける訳ではなくて
全然思い通りにならないことも多いですw
そんなところが人間っぽくていいですね。
すごく大変な工程を経て制作されていたり、
普段の生活の中からアイディアをストック
していたり、時澤さんの中には作品に対する
強いイメージがあるように思います。
だからこそ、
どんなに大変な工程であっても
出来上がった作品が美しく、
そして景色のような優しい可愛さが
にじみ出ているんだと思います。
そう言ってもらえると嬉しいですが、
ガラスの作品を作ることが私の仕事であるので、
大変な部分は「ここが私の頑張りどころ」と
歯を食いしばって作っていますw
その気持ちはよく分かります!
腰とか肩とか年齢と共に
身体にもガタが来ますもね。
でも、やっぱり制作に対するエネルギーは
とても素晴らしく、尊敬します。
今回納品いただいた商品に
『a bottle』とは違うリングレストを
お願いしていたのですが、
こちらはだいぶ大きく感じました。
作り方に違いはあるのでしょうか?
制作方法は吹きガラスでおおよその形を制作して、
冷ましてから全体を削りだしていたり、
その後火であぶるのは工程として変わらないです。
デザインはシンプルな円錐なのですが、
微妙な線を入れていて、その線を残すために
火であぶって仕上げています。
ここを磨いてしまうとツルツルな円錐に
なってしまうんです。
なるほど。
聞いてみないと分からない繊細な表現なのですね。
私の知っているリングレストは
高さの半分くらいの位置に指輪が来ているのですが、
時澤さんのリングレストに指輪を置くと、
だいぶ上の方に置かれますよね。
これには意図があるのでしょうか?
ガラスのかたまりって宝石みたいだなって思うんです。
ガラスの宝石の上が、指輪の宝石を休ませる場所だったら
面白いんじゃないかなって思って作りました。
リングレストとリングが対等になるような感じです。
わぁ!
そんな風に考えたことがなかったので、
とても新鮮な発想ですね。
リングレストを指輪を置くものとして考えるのか
リングレスト自体を宝石と見るのか。
いやぁ~、本当にすごいです!!!
時澤さんにとって
ガラスとはどんな素材なのでしょうか?
儚く、割れてしまうもの
なんだか意外なような、
納得がいくようなw
時澤さんの作品は一見すると
しっかりとした存在感があって、
「割れそうで怖い」とは思いませんでした。
割れてしまうものだからこそ
緊張感や美しさを際立たせる表現に
なっているのかもしれません。
一瞬の大事さみたいな。
本当ですね。
『a bottle』を手に取ると、
その小さな世界にギュッと
大切なものが詰まっているように感じます。
作りたいというイメージがあり、
ガラスという素材をよく知って、
大変な制作を続けいてますが、
ガラス作家として大切にしていることはありますか?
その作品が自分の琴線(きんせん)に
触れているかどうか、
を大切にしています。
自分の気持ちがあがらないと、
作品を作っていてもワクワクしないので
いかにワクワクして作品を制作しているかを
大事にしています。
作家さんっぽいですね!
作り手さんがワクワクしているからこそ、
出来上がった作品に
魅力が詰まっていくんだと思います。
時澤さんの作品を見たときに
ほっこり笑顔になってしまうのは、
きっととのワクワクが伝わって
くるからなんだと思います。
そういえば、
『a bottle』のパッケージにも「琴線」と
ありますが、言葉自体への想いとかも
あるのですか?
「琴線」は昔から好きな言葉なんです。
滋賀でギャラリーをやっているのですが
ギャラリーの名前も「琴線」です。
自分とお客様がどちらも琴線に触れるような
作品を並べているギャラリーなんです。
最後にお客様へのメッセージをお願いします。
作品が誰かの琴線に触れられるよう
願っています。
ぜひ手にとってご覧下さい。
たくさんのお客様の琴線に触れるように
FREEPARKでもスタッフみんなで
時澤さんの魅力を伝えていきます!
新商品やキャンペーンなどの最新情報をお届けいたします。