FREEPARK

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2023/08/28 15:10



 

突然ですが、
河原や公園に転がっている石ころを拾ってみたり、
じっと眺めたりしたことはありますか?

何気なく目を落とせば見かけるものですが、
ひとつひとつの質感や形を
じっくりと観察することは
あまりないように思います。

石に限らず、
自然界にある形を独自の視点から観察し
試行錯誤を繰り返しながら
作品を制作しているのが、
陶芸家の植田佳奈さんです。



植田さんの作品は
「人工物」のようでどこか「自然物」のよう。

今回FREEPARKに届いた作品たちも、
自然の形や風景を思起すような
不思議な質感・形のものばかりです。

個性的で興味深い作品たちが
どのように生まれるのか、
自然や素材と対峙しながら
どのように制作をされているのか、
工房を訪ねじっくりとお話を伺ってきました。
是非ゆっくりとお読みいただけると嬉しいです。



植田さんは現在、
神奈川県にある工房で制作をされています。
作業場には一輪挿しやオブジェ・器などを中心に、
形や大きさ、色や質感もひとつひとつ異なる作品たちが並べられていました。

早速お話を伺うと、
陶芸を始めたのは幼い頃に
テレビでろくろを回しているところを見て
興味が沸いたのがきっかけだったと話してくれました。

「テレビで見てから陶芸に興味はすごいあって。
あとは小さい頃からものを作ったりすることも好きでした。
小学校の陶芸クラブで活動をしたり、中学・高校でも美術部に入ったりして陶芸をやっていました」

そして、自然な流れのように
大学は武蔵野美術大学に進学し、
陶芸を専攻されました。
学生時代に本格的な陶芸の技法を身につけ、
大学を卒業してからも
陶芸教室でアルバイトをしながら
制作を続けていました。

転機となったのは、
4年程前に自身の工房用に電気窯を購入したこと。

作品を仕上げる要となる道具を手にしたことで、
今まで以上に自由に
作品制作ができるようになりました。

作品の数や実験に費やす時間もぐんと増え、
お店から声がかかったり、
個展を開催したり、
更にご自身の工房でワークショップを開催したり、
徐々に活動の幅を広げていきました。



沢山ある作品の中でも特に目を惹くのが、
こちらの象嵌(ぞうがん)の一輪挿し。

学生時代から制作していた作品であり、
植田さんの代表作とも言えます。

実際に手に取ってみると、
マットな質感の中に凸凹感があったり、
つるっとした感覚に気づいたりします。
見ても触っても感じられる独特な質感が
なんともいえない心地よさです。

そしてなんと‥!
表面の模様は全て、
植田さんの手作業によって描かれています。

陶土でつくった土の塊に
ひたすら点と点を繋いで模様が作られていきます。



ひとつの作品の模様を仕上げるまでに
早くて1日、
長いときには3日〜4日はかかるそうです。
気の遠くなるような作業ですが、

「小道具で表面をつついていくと描いた『点』が集まって『面』に変わる瞬間があって。これがすごく面白いんです」

と、植田さんは楽しそうに説明をしてくださいました。



こちらはころんとしたフォルムの石ころの作品たち。
川の上流から下流へ流されていく中で
削られ丸みを帯びていく、
川石の形を表現しています。



重なった姿の佇まいが美しい積み石の作品。
積み石の個々のテクスチャーは異なり、
また石同士の接着は
窯に積み上げて焼成した際に
釉薬が溶けてくっつくという
自然なしくみによるもの。

幼い頃、川べりで石を積んで遊んでいた記憶が蘇るような作品です。



凸凹とした表情が特徴的なこちらの作品には
スポンジが使われています。

石のカタチに削ったスポンジに
粘土を溶かしたものを染み込ませ焼き上げると、
スポンジが溶け、
粘土のみがスポンジの形になって残ります。

その独特なフォルムや
表面にできる質感を生かし制作されました。

「自然の石の感じを表現したい」と考え、
実験を繰り返した植田さんならではの手法です。



他にも自然物の成り立ちや形をなぞらえた
様々な作品が沢山ありますが、
独自の試行錯誤により生まれる作品の
『核』となっているものは一体何なのでしょう。
植田さんに伺いました。

「陶芸っていうと、お皿をイメージすることが多いと思います。
特に食器はプロダクトとしての扱いやすさが大事だと思うのですが、私はそういった機能的なところを意識した制作を全然してこなかったんです。
それよりも、自然物に近い質感や形をどうやって表現するか探りながら作ってきた、という感じですね。

自然物に近い質感や形とは、川の流れに揉まれながら丸みをおびていく川石の形だったり、海辺に寝そべる貝殻の模様だったり‥。

まわりで起こった現象や自然の形を捨って集め、それらを『自分の手で表現するとしたらどんな風にできるだろう』と思いながら日々観察し実験を繰り返しています。

そんな中で、ある時全く新しいものが生まれることもあるんです」

と笑顔で話してくれました。

川の上流から下流へ流され
丸みを帯びていく川石のように、
植田さんの手でじっくりと
時間をかけることにより、
土が新たな姿へと変化していく。

まるで、新しい作品が生まれる過程そのものも
自然界の成り立ちのように感じました。

そうして進化をし続ける作品は
その佇まいも美しく、
また、空間にぽんと置いても
思わず触りたくなってしまう、
なんともいえない不思議な魅力があります。



独自の視点から観察をし、
時間をかけひとつずつ制作された
植田佳奈さんの作品たち。

見て触って感じることで、
普段は気に留めることのなかった
自然の情景をふわりと
私たちに思い出させてくれるかもしれません。

作品は店頭&オンラインよりご覧いただけます。
(※オンラインストアでの販売は8月29日 19:00~スタートとなります。)

唯一無二な作品たちを、
ぜひお手に取って
じっくりと感じてみていただけると嬉しいです。

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