2025/03/24 18:42
桜のつぼみが開き
淡い花びらと
真っ青な空の対比が
美しい季節
ガラスを通る光が
柔らかな影をつくり
そっと吹くそよ風が
気持ちいい
新年度が始まり
笑顔があふれる季節に
FREEPARKでは
ガラス作家、吉積彩乃さんの
ポップアップを開催します
期間:2025年3月29日~4月13日
アート性の高い吉積さんの作品には
置いてあるだけ魅力が溢れる
存在感があります
世界で活躍するガラス作家の姿を
たくさんの方に知っていただきたく
インタビューをさせていただきました
どうかゆっくりと
お読みくださいませ
▽▽▽▽▽▽
まずは自己紹介を
簡単にお願いします
■ 吉積さん:
1991年愛知県出身です。
2014年に武蔵野美術大学を卒業した後、
富山ガラス造形研究所に進学するため
富山に拠点を移しました。
そこから基本は富山を拠点に
制作活動をしています
武蔵野美術大学では
工芸工業デザイン学科だったそうですが
子供のころや10代の頃から
モノづくりにご興味があったのでしょうか?
■ 吉積さん:
ありがたいことにとても教育熱心な両親で、
小学校低学年くらいまでは
ほぼ毎週習い事をしていました
その中で日曜日に行く美術教室があって、
そこは最後帰る前にみんなで輪になって
その日したことを話せば何をしてもいい
というすごくゆるい教室で、
制作をする日もありましたが
特に何かを作らずに
資材がある大きな倉庫で昼寝したり、
そこで飼われている犬と1日遊んだりしても
「それはいい日だったね〜」
って言われるんです
そのとき美術ってなんて自由で素晴らしいな
と思いましたね
またその教室に通ったことで
手を動かして作ることも好きになったので、
将来ものづくりをする仕事につけたらいいな
と思いました
素敵な思い出ですね!
小学生の頃に美術に対する
いい印象があると
作りたいって気持ちが
ずっと続いていくように思います
美術大学に入ろうと
思ったことにも納得しますね
武蔵野美術大学では
どのような活動をされていたのですか?
■ 吉積さん:
大学生のときは、
自分が何に興味があって
何が好きなのかが分からなくなって、
ひたすらいろんなことをしていました
六本木アートナイトに参加してみたり、
武蔵美にはイメージライブラリー
という一般にはないニッチな(変な?)
映画を見れる資料館があって、
時間があればひたすら映画を見たり
専攻に分かれてからは
ガラスに興味があって
いろんな展示会を見てまわりました
初めての上京だったので、
もちろん大学生らしく
遊びまわってましたけど
今思うと、ジャンルに拘らず
いろいろなことをインプット
していた時期だと思います
目まぐるしく吸収していた
吉積さんの学生時代が浮かびます
上京してはじまった大学生活は
今までと大きな変化だったと思います
その中で好奇心に導かれるまま
たくさんのことを経験したことは
きっと今の糧にもなってそうですね
ガラスと出会いのお話も
お聞かせください
■ 吉積さん:
工業工芸デザイン学科は
専攻を決める前に
お試しクラスみたいなものを
4つ取らないといけないのですが、
その中のひとつがガラスでした
たまたま吹きガラスのクラスを
取ったのですが、
それがもう面白くて面白くて!
それまでのガラスのイメージは
透明の機械的な窓やコップの
イメージしかなかったので、
吹きガラスやパート・ド・ヴェールの
作品をそのとき初めて見て
こんな世界もあるんだなと
色を使うのが好きなので、
ガラスならそれもできると思い
迷わず専攻しました
※パート・ド・ヴェール
ガラスの粉末を型の中で熔融して成型する技法
吹きガラスとの出会いが
吉積さんのガラス作家としての
はじまりなんですね
目をキラキラと輝かせて
溶けていくガラスを
見つめている姿が想像できます
ガラスにどっぷりはまり、
富山ガラス造形研究所に
進学することにされたんですね
入学してよかったことや
思い出に残っていることなどが
あったらお教えくださいませ
■ 吉積さん:
作品を作ることだけに
集中できてよかったです
学生時代はずっと学校にいて
制作していました
また、第一線で作家として
活躍している専門の先生と助手が
各担当教科にいて、
常勤の先生たちなので
いつでも気軽に質問できたことです
設備はもちろん
常に海外からの先生がいるので
日本にいながらアメリカ式の
吹きガラスのクラスを受講できたことも
自分には衝撃でした
武蔵美ではプロダクトよりの
作品を作っていたので、
彫刻やアートとしての
ガラスの扱い的な感性は、
富山にこなければなかったと思います
富山に来てから英語を真剣に
勉強しようと思いましたし、
国内外で活躍されている先生方をみて、
いつか海外に出てみたいと
憧れたのを覚えています
ガラスの作品に対しての
視野が大きく広がった時期
だったのですね
日本だけでなく
海外の技法を習得できたり、
アート作品の可能性を見つけたり、
さらには英語を学びたいと
思えたことは大きいですね
オーストラリアで
活動されていたことについても
詳しく伺いたいです
■ 吉積さん:
富山ガラス造形研究所を卒業した後に、
富山ガラス工房に就職しました
在職中にアーティスト・イン・レジデンスの
機会がありまして、
運よく滞在作家に選ばれて
6週間オーストラリアの
キャンベラグラスワークスで
滞在制作をしました
そのときは今みたいに英語は喋れなくて
意思疎通も全然できないのに、
一生懸命わたしとコミュニケーションを
取ろうとしてくれるオーストラリアの
ガラス作家さんの暖かさというか、
細かいことは気にしない
日本人にはないおおらかさというか、
すごく好きになってしまって。。。
その経験からオーストラリアの
ガラス工房で働きたくて、
海外の若手作家を受け入れていた
ジャムファクトリーという
工房を紹介してもらい、
翌々年渡豪しました
ビザの都合上2年しか住めなかったので、
アーティスト・イン・レジデンスや
コンペはほぼ応募して
なるべく現地で展覧会をしました
自分の作品の制作もしながら
工房のプロダクションを制作したり、
休日も個人作家さんのアシスタントも
たくさんしました
休みの日は住んでいた地域は
ワイナリーがたくさんあるので
お酒を飲んでリラックスしたり、
植生を整えるために自生の木を植える
ボランティアをしたり
余暇の楽しみ方もここで
たくさん教わった気がします
うらやましいです!
アーティスト・イン・レジデンスは
憧れている作家さんも多いですよね
オーストラリアで活動する機会を得て
その後渡豪して2年もガラスに
携わっていたことは
これからガラス作家になりたい人への
道しるべになると思います
現地で自ら進んで活動を広げていた
その行動力は素晴らしく尊敬します
オンオフの切り替えができるのも
とてもいいことですよね
富山に戻ってからは
どのような活動をされていますか?
■ 吉積さん:
帰国してからは、
富山ガラス造形研究所の助手として
働きつつ作家活動をしています
拠点は富山に戻りましたが、
海外でも制作のチャンスがあれば
いろんな国に行きたいと思っています
展覧会は日本ベースですが、
昨年はアメリカとフランスで滞在制作や
ワークショップを受講してきました
吹きガラスはチームワークなので、
大型の作品を作るときは
作品を作れる設備が整った場所で、
上手なガラス作家さんに
制作を手伝ってもらえないと
作品ができません
そういう意味で日本だけに拘らず
制作活動をしています
なるほど!
制作の規模が世界規模!
ガラスのアートワークは重量があり
ひとりでは制作することが
難しいのですね
グラスや器などは
基本的に一人で作家さんが
作っていると思っていたので
吉積さんがチームを大切に
作品を制作していると聞けて
よかったです
個人的な感想なのですが、
吉積さんの作品からは
海外の作家さんの作る大胆さや
思い切った色使いが魅力だと感じました
■ 吉積さん:
色についてはオーストラリアにいた
経験に大きく影響されていると思います
富山は基本天気が悪いので、
ずっとどんよりしているんですが、
オーストラリアは雨の日が珍しいくらい
雲ひとつなくカラッと晴れています
その日差しの強さというか、
色や光のコントラストの
はっきりした強さは独特だと思います
その感覚は曇りがちの北陸の天気が
当たり前になってしまった今では恋しいです
なので、作品にそのような色使いを
取り入れ始めたのかなと思っています
確かに、
住んでいる場所の天気や空気感は
無意識に影響していそうですね
色だけでなく
吉積さんの作品にはアート性があり、
唯一無二な存在感があります
どのような想いを込めて
つくっているのでしょうか?
■ 吉積さん:
わたし個人の思いとしては、
プロダクトでも使いやすく
今あるものと馴染むニュートラルなものより、
その作品に強い主張があって、
何か良いエネルギー的なものを
もらえるような作品を作りたいと思っています
そういう意味では、
アートとデザインの中間のような
ものづくりをしているのかなと
感じるときがあります
使っていないときでも、
ここに何かあるなという
存在感を放ってほしいです
すごく腑に落ちました
今回のポップアップのラインナップも
その視点から見るとより理解できます
作品についていくつか質問させてください
まず、Objectはどれも個性的な作品ですが
誕生秘話などがあればお教えくださいませ
■ 吉積さん:
アートワークとして、
ICONシリーズという作品を
作っているのですが、その作品に使う
小さなガラスのパーツがあります
そのパーツは
ホットショップで組み立てるため
失敗した時に備えていつもスペアを作るので、
余ってしまって使わないパーツが
たくさんあるんです
それであるとき、
オーストラリアの同僚が
私の作品のタイトルを覚えていなくて、
適当な作品の見立てでイメージを想像させて
(例えばスイミングプールと緑のパンツとか)
私に話しかけてくるのがすごく面白くて
すごくチャーミングじゃないですか?
なので言われたことを思い出したり、
これをみたらどんなタイトルをつけてくるかな?
と想像しながらそれらのパーツを使って
小さなオブジェの作品にしました
コミュニケーションにつながる発想が
とても面白いです
オブジェを見ながらお客様同士で
会話が盛り上がるといいなと思います
照明の作品についてはいかがでしょうか?
■ 吉積さん:
照明は日常使いのうつわと比べると
機能性を重視したものより
視覚的に楽しい彫刻的な要素が
強いものもあったり、
作品によって振れ幅が多いものだと
感じていてずっと興味がありました
暮らしの中にアート的な要素を
取り入れるきっかけとして
彫刻的な照明作品を
今後作っていけたらいいなと思っています
いきなり彫刻作品を自分の家に買うのは
ハードルが高くても、照明なら
自分の暮らしにどう溶け込むのかも
想像しやすいと思うので
フォトクレジット:南部幹
わかります
こんな照明が
家にあったらいいなって
思います
微妙な曲線が可愛いです!
Wiggle Stakeは
どんな作品ですか?
■ 吉積さん:
Wiggle Stakeは
もともと自分の観葉植物の支柱を
探していたときに、
あまり良いものがなくて
自分で使うために作りました
お客様で花瓶に入れてお花と合わせて
オーナメントとして使用されたり、
そのままオブジェとして飾られる人もいます
使う人が自由に楽しんでもらえたら良いな
と思っています
フォトクレジット:南部幹
フォトクレジット:南部幹
吉積さんの作品の中では
割と身近に使えそうですね
グラスも使えることを
意識しているんでしょうか?
■ 吉積さん:
グラスに使っているケーン
(色ガラスを引き伸ばした細い棒) は、
すべてWiggle Stakeを作る時に出た
作品としてはサイズが合わない等で
使えない部分です
取っておいたものがある程度たまったら
ケーンの太さや色の組み合わせを
考えて制作します
なので、それぞれガラスの量や
色の組み合わせが違うので
基本的に同じものはできません
ガラスを溶かすのにはガスや
電気の膨大なエネルギーを使っています
特にプロダクト作品は、
リサイクルやアップサイクルなど
少しでも環境負荷を減らせる
プロセスを取り入れたいので、
表現活動とは違った視点で制作をしています
フォトクレジット:南部幹
そうなのですね
ガラス作家として活動する中で
環境を意識して作品へ転化することは
とても大切なことに思います
さらにその作品が
世界でひとつだけのグラスとは
なんだか心くすぐられますね
改めて、ガラス作家として
作品を作り続けている中で
いいところと大変なところを
お教えください
■ 吉積さん:
良いところは、
心から楽しんでできる仕事に
出会えたことです
吹きガラスを初めて10年になりますが、
今が一番楽しいと思って制作ができています
この仕事をしているからこそ
海外で働くチャンスもありましたし、
世界中のいろいろな人に会えました
そんな仕事に出会える人は
なかなか多くはないと思うので、
わたしは恵まれているなと思います
難しいところは体が資本の仕事なので、
体力の維持や適度に運動したり、
夏の暑い時は無理をして制作しないなど
常に体に気をつけないといけないところです
ジムなどのストイックな
トレーニングは苦手なので、
なるべく日常生活で
体を動かすように心がけています
フォトクレジット:南部幹
吉積さんのことを憧れて
ガラス作家を目指す人が
いるかもしれませんね
それからここ最近の夏は
制作するのに危険なくらい暑いので
無理をしないことも大事ですね
これからのビジョンがあったら
お教えください
■ 吉積さん:
今年の4月からフリーランスで活動するので、
積極的に海外の工房での制作活動をしたいです
また、自分の工房になる予定の倉庫を
購入してそのままの状態なので、
自分でのんびりDIYをしながら
整えていきたいと思っています
観葉植物とガラス作品をたくさん置いた
温室のようなギャラリースペースも
家の一角に作りたいです
それが一番楽しみです!
まさに今からですね!
これからの活動に期待しています
最後にFREEPARKのお客様へ
メッセージをお願いします
■ 吉積さん:
ぜひ実物の作品を見ていただけたら嬉しいです
3/29は在廊予定なので、
直接作品のことをお話しできたらと思っています
フォトクレジット:南部幹
インタビューは以上となります
ガラス作家、吉積彩乃さんの
魅力がたくさん伝わったと思います
作品をぜひご覧くださいませ
新商品やキャンペーンなどの最新情報をお届けいたします。